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REPORT

道路のズレは〇〇のズレ

~碁盤の目状の都市における歴史と珍現象を探る~

こんにちは!

社会工学類 都市計画主専攻(配属予定?)の加藤です。

さて、先日は東京オリンピックが開催され、なかなか盛り上がりましたね!

ところで、東京オリンピック…なのにマラソンだけは“ある都市”で行われました。そう、北海道札幌市です。

マラソン中継ではその街の様子も映し出されましたが、こんなことを感じた人もいるのではないでしょうか?


「街並みが綺麗だな」


そうなんです。既にご存知の方も多いかもしれませんが、札幌市中心部の道路網は碁盤の目状に形成されており、理路整然とした街並みが特徴的です。

前置きが長くなってしまいましたが、今回のブログ記事のテーマは「道路のズレは〇〇のズレ ~碁盤の目状の都市における歴史と珍現象を探る~」です。

1. 札幌における都市計画の“原点”

地図

1866年(慶応2年)、相模国の幕臣であった大友亀太郎によって、札幌市中心部における都市形態の軸となる大友堀(現 創成川)が作られました。1869年(明治2年)には札幌本府の建設を命じられた島義勇(よしたけ)判官が京都の街並みを参考に構想を練り、その後、岩村通俊(みちとし)判官が現 南1条通りを南北に、大友堀を東西に分けた格子状の街区構成を設定しました。この南1条通りと大友堀が、札幌市における都市計画の“原点”となるわけです[1][2]。

2. 実はズレまくり…な札幌

次の図は1891年(明治24年)における札幌市街の地図です。格子状に計画された都市…とても綺麗ですよn…ってあれ!?

地図

図の南西部をご覧ください。な、な、なんと、中心部の格子とずれてしまっているではありませんか!!

というのも、これは南西部が別の歴史を持っているからです。この地区はかつて山鼻村と呼ばれ、当時のハッタリベツ新道(現 石山通:国道230号線)を軸に直交する道路が形成されました。異なる場所で異なる軸を基に道路が建設されたので、結果としてズレが生じているんですね。

それにしても、どうせなら方角に合わせてほしいですよね…中心部は東西南北の方角に合わせて整備されているのに…って、あれあれ!?!?

地図

いやそもそも中心部もズレてるんかい!!

…思わずツッコんでしまいました。そうなんです。実は札幌市の道路における格子はズレまくっているんですね。

なぜ中心部の格子がズレているのか、すなわち、大友堀が南北の正しい方角に掘られていないのか、という理由は実は定かではないそうです[3]。

地球の極と地磁気(地球が持つ固有の地場)の極は一致しないため、その違いから真北と磁北のわずかな差が生じてしまったのかもしれませんが…。

(画像は国土地理院地図より引用)

3. 近代化と都市化

近代化した札幌

大正期に入ると近代化が進み、中心部では自動車走行を視野に入れた道路の舗装が実施されました。とはいっても、当時の車道はアスファルト舗装ではなく、木レンガによる舗装でした。

ちなみにこの画像の「木レンガ舗装とイチョウ並木」は現在の北3条広場(通称:アカプラ)として再開発され、今もなお市民や観光客に愛される憩いの場としての役割を担っています。

昭和に入ると“自治”の時代となり、路面電車をはじめとする公共交通機関や札幌駅前通りの整備が行われ、都市化が進んでいきました。

4. 「札幌は碁盤の目」を覆す? ~進展する郊外化と道路網の変化~

戦後の札幌は著しく発展を遂げます。特にオリンピック招致決定(1966年)以降は地下鉄の開通を筆頭に都市の様相が一変しました。そういった経済発展および人口増加の影響もあり、1972年には政令指定都市に指定されました[4]。

ともなると、都市域は拡大するわけですから、当然新たな宅地造成を行わなければなりませんよね。

これは札幌市清田区の郊外住宅地にあたるマップなのですが…

清田区の地図

「碁盤の目じゃないじゃん!!!」

そうです。いかにもニュータウンというか、住宅街って感じの道路網ですよね。

口酸っぱく「札幌は碁盤の目」と連呼しましたが、実はこのような道路網を有する市街地も少なくありません。清田区をはじめとして、北区あいの里、南区真駒内、手稲区明日風などがあります。

期待外れだな…と思った方に朗報です。実は住所に「碁盤の目」が隠されているんですね。

札幌市をはじめとして、北海道の多くの市町村では条丁目制を取り入れており、これは都市区画が碁盤の目状である象徴とも言えます。しかし、上図のような道路網の市街地においても条丁目制を採用しているんです!(逆に分かりにくいのでは…?)

こういった場所でも条・丁目が定められていると、おもしろ現象が起きるんですね。それが「欠番」です。例えば南区の南38条には西10丁目と西11丁目しかありません(1~9丁目が消えた…)。

札幌市には計画的に作られた都市だからこそ生じる“珍現象”がいくつもあるんですね!

(画像は国土地理院地図より引用)

5. 最後に

本記事の作成にあたり、弊会および学類の先輩である方から助言をいただきました。本当にありがとうございました。

いかがでしたでしょうか?

札幌市については、歴史住宅街の形成の仕方における差異が道路構造に影響を与えた可能性がありますね。

このように道路について調べてみると、新たな発見や面白い現象が見つかって興味深いと思います。

皆さんも出身地や馴染みのある都市の道路について調べてみては!?

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

6. 参考文献

[1] 札幌市,「道路建設の歴史」,URL: https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/stn/doroshiryo/rekishi.html (閲覧日:2021年9月24日)

[2] 札幌市,「大友堀ものがたり」,URL: https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/rekiken/story/story02.html (閲覧日:2021年9月24日)

[3] 北海道ファンマガジン,「碁盤の目が微妙にずれている件」,URL: https://hokkaidofan.com/yamahana/ (閲覧日:2021年9月24日)

[4] 札幌市,「札幌市景観計画(2017年)」,URL: https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/keikankeikaku/documents/keikaku-2.pdf

(閲覧日:2021年9月24日)